自分がマイノリティだと思っていた10代のわたしに読ませたい「同居人の美少女がレズビアンだった件。」


ピンポイントでツボをつくマンガに出会いました。
同居人の美少女がレズビアンだった件。(著・小池みき/監修・牧村朝子)

自分は女ではないのかもしれない。
バイセクシュアルなのかもしれない。
そう悩んでいた10代の自分に読ませたい本です。

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33人の男女が暮らすシェアハウスにレズビアンの美少女が入居したら

筆者のみきさんは、地方から上京して渋谷のシェアハウスに入居しました。

そこは33人もの男女が暮らす大所帯。

様々な事情を持つ人々が、それぞれの時間帯で仕事をし、暮らしています。

そこに入居してきた美少女、牧村朝子=まきむぅ。

やけにかわいい子が来た、と思ったら、実は彼女はタレントの卵。

さらに、彼女は同性愛者・いわゆるレズビアンだったのです。



タイトルからすると当然、このみきさんと、美少女まきむうとの、あやうい恋物語とか、すれ違いコメディがが始まるのかな、と思うじゃないですか。

全然違うんです。

終始、みきさんはまきむぅの応援者であり、友人です。
そこには、ほのめかすような恋愛感情も生まれません。
これはわりと冒頭からわかるので、ネタバレでもなんでもなくです。

まきむうがレズビアンであることをカミングアウトする場面も、このようにあっさりと。



まきむう、運命の出会い、そして国際結婚へ

もう、序盤からまきむぅは、レズビアンが集うパーティーで運命の出会いをします。

通称「森ガ=森ガール」。なんとフランス人です。



人口100人の村から来て、レズビアンで、日本語堪能なオタクで、ってキャラ強い!

そして、まだ30ページも読んでいないのに、まきむぅと森ガは結婚することにします。



なんだ、その早さ!?
わたしなんて、出会ってから結婚するまで12年もかかったよ!?
関連記事>出会ってから12年後に結婚した気の長い夫婦が読む「喰う寝るふたり 住むふたり」

フランスに渡りPACS婚

そして、お互いの両親へのカミングアウト、
女性同士の結婚を宣言し、
フランスと日本との超!遠距離恋愛をし、
本を出版し、
同性婚の賛否に揺れるフランスで、
制度化されたばかりの同性ペアによるPACS婚(準結婚)をします。

その間、みきさんはほどよい距離を保ちつつ、
まきむぅのノロケや泣き言を聞き、
レズビアンタレントとして活動し始めたまきむぅをサポートし、
星海社のジセダイエディターズ新人賞に応募して、
まきむぅ=牧村朝子の自署「百合のリアル (星海社新書)」の出版までこぎつけます。

なぜ、ヘテロ=異性愛者でマジョリティ側のみきさんが、そこまでマイノリティのまきむぅを支援したのか?

ということは、中を読んでいただくとして。

わたしには、この下りがピンポイントで刺さりました。

言葉は自分も他人も切りまくる



これ、すごく自分にも覚えがあります。

わたしは、悩んでいる人に共感した時や、世間に知られていないけれどすごいことをしている人に出会った時、それを言葉にして知らしめたいという衝動があります。

自分の不登校をしていた過去を明らかにしているのも、どこかで悩んでいる子や親に、少しでもこうやって社会に出て生きているサンプルがいるよ、と伝えたいからで。

でも、明らかにしていく中には、学校に行きたくなくても他に逃げ場がなかった子、子どもに自死された親、普通に学校に行っていた人、同じフリースクールを出たけど社会になじめない人を傷つける文章を、たぶん書いています。

子育てに関することを書く時もです。
子どもを産みたいと思ったことがないけれど、産んでみたらなんとかやっている、という記事を書いた時は、同じように自分に母性を感じられない人に伝わればと思いつつ、望んでも子どもを授からない人を傷つける覚悟で発信しました。

関連記事>母性が無くても大丈夫でした。意外と母ちゃんやってます

でも、発信しないと伝わらない。
世界という巨大なケーキは、切り分けないと人に配れない。
(この表現も上のページの後に出てきます)

そんな、みきさんの自省と覚悟に共感し、このマンガをレジに運びました。

マイノリティだってマジョリティになる。その逆もまた。

この本は、セクシャル・マイノリティに何らかの形で関心がある人、または当事者の方が手に取ることが多そうです。

実際、わたしが手に取ったのも、10代の頃にさんざんこのテーマで悩んだからでした。

なにしろ、中学生で声変わりはするし、身長は170cmを超えてなおすくすくと伸びたし、17歳まで初潮がなく、女の子を好きになったりもしました。  

同時に、男性も好きになっていたので、バイセクシュアルなのかもしれない。

17歳の夏に初潮が来るまでは、本当は女じゃないなのかもしれない。

また、10代後半にゲイ、トランスジェンダーの知人が数人いたので、それは自分にもあり得ると思っていました。

でも、この本を読むと、そういうセクシャルな悩み以外にも、誰にでもここに書かれていることは当てはまることだと感じました。

少し横道にそれますが、劇団の仕事をしていた時に、横浜のドヤ街を1人で訪ねて行ったことがあります。

そこで、ガイドしてくれたのはアイルランドから来た留学生でした。

みなとみらいの間近にあるドヤ街で昼間からお酒を飲んでいるオジさんたちがいる風景、アイルランドの複雑な情勢を淡々と語る留学生の少女。
その光景は、これまで 自分は学校に行かないマイノリティだと思っていたけど、別の見方からすればマジョリティになるのだ と教えてくれました。

今も、例えば専業主夫のブロガーさんの発信を見ると、自分は「ママ」という多数派にいるために見えないことに気づかされます。

逆に、今は自分が平凡なよくいる多数派だと思っていても、3日後には聞いたことがないような病気になってマイノリティになることもありえますね。

LGBTに限らず、マイノリティの立場にある人、身近にそういう人がいる人におすすめ

この本は、何らかの形で、自分がマイノリティだと思っている人、あるいは身近にそういう人がいる人に、おすすめです。

固く書いてしまいましたが、ひたすらまきむうのノロケにつっこむみきさん、イケメンな森ガが楽しめる軽妙なコミックですよ。

pixivに4コマもあります。

書籍版はまた書き下ろしなので、pixivの方を読んでからも別に楽しめますよ。
本だとタイトルが買いにくい…という方は電子書籍でどうぞ。


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