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ケンドー・カシン『フツーのプロレスラーだった僕がKOで大学非常勤講師になるまで』が細かすぎてプオタ以外に伝わらないのだが、面白すぎるのでみんな読んで!

紀伊国屋書店弘前店のケンドー・カシンサイン会告知

紀伊国屋書店弘前店のケンドー・カシンサイン会告知


あの、ケンドー・カシンが自伝本を出すって!?

プロレス好き界隈に波紋を広げた『フツーのプロレスラーだった僕がKOで大学非常勤講師になるまで』(徳間書店)が、あんまりおもしろすぎたのでレビューをあげておきます。

なお、この記事は9/16(土)紀伊国屋書店弘前店にて、カシン選手によるサイン会&握手(撮影)会が開催される前夜に書いています。

早くも重版決定! 出版不況なのにえらいことです。

そんなカシンの本の魅力を、一般の人にも伝わるようにがんばって書いてみます。


ケンドー・カシンとは何者なのか?


まず、プロレスファンであれば、「ケンドー・カシンの自伝本」というだけで、好き嫌いはともかく興味深いと感じられるはず。

ここでは、出版社がどのような著者紹介をつけているかを見てみましょう。

著者について
1968年8月5日、青森県南津軽郡藤崎町出身。
光星学院高校を経て早稲田大学。
早大レスリング部時代に全日本学生選手権3連覇、全日本選手権優勝。
92年新日本プロレス入団。
96年ヤングライオン杯優勝。同年欧州遠征、ケンドー・カ・シン(のちにカシン)となる。
99年第2代IWGPタッグ王座戴冠。同年ベスト・オブ・ザ・スーパージュニア6で優勝、第34代IWGPジュニア王座。
2000年PRIDE出場、本名の石澤常光としてハイアン・グレイシーと対戦。KO負けするが翌年KO勝利。
02年新日本退団。全日本プロレス移籍。04年第50代世界タッグ王座を奪取するがベルトを封印したこと等で全日本解雇。全日本からベルト返還訴訟。
05年永田裕志・中西学・藤田和之とチームジャパン結成。
06年HEROs、K-1PREMIUM2006Dynamite!参戦。
07年IGF参戦。08年早大大学院スポーツ科学研究科修士課程合格。
09年DREM.12参戦。16年より慶應義塾大学SFC非常勤講師に就任。
17年大仁田厚とはぐれ邪道軍結成。181センチ、87キロ。
得意技は飛びつき式ほか各種腕ひしぎ十字固め。入場曲はSkyWalk。

フツーのプロレスラーだった僕がKOで大学非常勤講師になるまで著者紹介より引用)

補足すると、1968年に生まれた時は、まだ藤崎町ではなく常盤村。その常盤村長さんのご子息でした。

レスリングの強豪校として有名な八戸学院光星高等学校へ進学し、早稲田大学へ入学。

アマレスのエリートとして、アントニオ猪木が率いる新日本プロレスに入団。

津軽人らしい強情っぱりで、ジュニアヘビー級の体格なのに飛んだり跳ねたりはいっさいなく、マイクアピールなどもしない新人時代でした。

高田延彦のUWFインターが乗り込んできて、新日本プロレスと対抗戦を行った時、若手同士の試合で素顔の石沢選手が勝利後に、シッシッと手の甲を振ってUインター勢をあしらった姿が強烈でした。めっちゃエリート!

その後、新人選手の登竜門「ヤングライオン杯」で優勝して、そのご褒美でヨーロッパ遠征に1年近く行ったら、マスクマンになって帰ってきました。

ぜんぜん、飛んだりしないのになぜ?! と当時も話題沸騰(わたしの周囲で)でした。

そのプロモーターのオットー・ワンツ氏が昨日亡くなられたそうですね…R.I.P。

その後、ちょっとうまくいかない時期がありながらも、
「俺はプロレス界に必要じゃない人間」発言などから異端児として認識されはじめ、1999年には百花繚乱だった新日ジュニアヘビー級でトップをとります。


当時の週刊プロレス表紙

当時の週刊プロレス表紙


賞金を紛争地域だったコソボに寄付するとかですね、普通に聞いたらいい人っぽいのですが、わざわざ逆なでする感じでふるまっていました。賞状は破るしトロフィーは壊すし。たまらん。

その後、素顔で総合格闘技に参戦したり、
新日を退団して三沢選手らが大量離脱した後の全日本プロレスに入団したり、
解雇された上にベルトを返さなかったと訴訟されたり、
猪木のIGFに出たりと、なかなかの波乱万丈ぶり。

そんなカシンの本が「フツーのプロレスラーだった僕が~」って、もうそこからツッコミどころ満載です。

こんな人、いないから他に!

ケンドー・カシンならではの本でした

まず、この本の内容紹介文を引用します。

プロレス界きってのへそ曲がりが、過去一切語らなかった自身の半生と考えをすべて語り尽くした。新日本入門、全日本移籍、ベルト返還訴訟、永田・中西らへの本音、ハイアン戦の裏側、大仁田との縁、アカデミズムへの道……最強・最驚の猛者がプロレスの歴史に残した稀代の足跡と思いとは何か。光星学院高校時代を知る後輩、レフェリーのボンバー斉藤氏との対談、ベルト返還訴訟原告の青木謙治氏との衝撃対談も収録。ケンドー・カシンを知る超一級資料。
フツーのプロレスラーだった僕がKOで大学非常勤講師になるまで内容紹介より引用)

すでに、一般層を振り切っているキーワードが並んでいます。

そして、目次。

ちょっと小見出しをピックアップしましょう。

  • 新日本の道場以上に過酷な高校
  • 中学校のときは帰宅部だった
  • 闘魂クラブでクレーム対応の仕事
  • 先輩レスラーはそんなに強くはなかった
  • 永田は顔がかっこよければ不動の王者になれた
  • 安田忠夫にはだまされた
  • 中西から現金書留で結婚祝いを送り返される
  • プロレスは1000試合やってやっと一人前
  • 慶應大学での授業は「イノシシの捕まえ方」ではない

すでにパワーワードすぎてやばいです。

そう、最初は自伝と聞いていたので、本人が執筆したのかと勘違いしましたが、ロングインタビューと対談の書き起こしを編集された本でした。

インタビューもかなり踏み込んで聞いています。
ライターの名前が記載されていないのですが、どなたなのか気になります。

八戸光星学院のレスリング部はプロレス道場より過酷だった

特に光星学院時代のエピソードは強烈で、同門出身レスラーのボンバー斉藤との対談も合わせると、本書のかなりの割合を占めます。

レスリング部「根性会」でタックルの打ち込み練習を夜中3時までやらされたとか、自分の身長以上の深さの穴を掘って自分を埋めろと命令されたとか。

30年ぐらい前のことなので、今は違いますよね、きっと。

そこで、中学では帰宅部だったけど、特に大柄でもなく趣味で懸垂をしていた石沢少年がなぜか生き残って、全国選抜で優勝したりしていたそうです。怪物かよ。

原告と被告の対談

もう一つの対談相手が、ベルト返還訴訟の原告だった青木謙治氏。

かつて武藤敬司、小島聡、ケンドー・カシンとともに新日本プロレスから離脱して全日本プロレスに移籍したフロントスタッフの一人です。

元原告と元被告の対談。
なかなか見られるものではありません。

青木 カシンさんって、僕にとってはジュニアのスター選手というだけではなく、闘魂クラブ時代に同じ事務所のフロアで働いていたイメージが強くて。当時、会話はしてないけど、とても近い存在として親しみを持っていました。

カシン それをなぜクビにするんだよ。

青木 まあまあ(笑)。

その後に語られる舞台裏がリアルです。

ほめる人はほめ、けなす人は徹底的にけなすスタイル

ケンドー・カシンと言えば、毒舌、へそ曲がり、変人、偏屈というキーワードが並びます。だが、そこがいい。

そんなカシンでも、すごいと思ったレスラーのことは素直にほめています。

なかなかそういう発言はメディアに載らないので貴重でした。

クリス・ベノワ、エディ・ゲレロ、ディーン・マレンコ、カール・ニュートン、ドクトルワグナージュニア……あれ、外国人ばかりですね。やっぱり言葉が違う方がカシンとうまくいく説は本当だったのか。

日本人では付け人をしていたA猪木を始め、天龍源一郎、同世代で金本・大谷選手のことを評価していました。

逆にけちょんけちょんに言われているのが、アマレス三銃士と言われていた中西学、永田裕志。それに借金王だった安田忠夫。

別枠で、大仁田厚は何かと人生の節目の時期に登場すると語られています。

昨年から遺恨マッチを繰り広げていますね。時代が変わったと感じる組み合わせでしたが、縁は前からつながっていたようです。

やっぱり'90年代後期~'00年代にプロレスにハマった人じゃないとついてこられないかも

ここまで書いてきてなんですが、やっぱり当時のプロレス界の空気を知っている人じゃないと付いてこられなさそうな気がしてきました。

あの多団体時代のジュニアとか、総合格闘技がプロレスに混ざってきた時のゆらぎとか。

特にPRIDEや大晦日の猪木興行などで、プロレスラーとして総合格闘技に参戦していた舞台裏のことなど。

専用の練習をしたくても場所がなく、相手もいないという時代に、どう戦いに臨んだのか。

今だから読めるおもしろさです。

逆に、今の新日本プロレスを支える棚橋&オカダ選手などは一文字も出てきません。

ストレートな回顧録

現役・引退問わず、本を出すプロレスラーは多いのですが、その多くは「自分の伝説」であったり、「プロレス界のタブー暴露本」だったりします。

では、このカシンの本はどうかというと、そのままカシンが当時を振り返ってストレートに語っている回顧録になっています。

特に盛ることもなく淡々と自分が見てきたプロレスと総合格闘技の光景を語っています。

口が悪いのは元からなのでご愛敬。

それがもうとんでもなくおもしろいので、ついてこられる人は絶対に読むべき本です。

重版決定!

明日、2ショット&サインいただいたら、ここにこっそり追加しておきます。

ああ、ワクテカしすぎて眠れん!

【追記:9/16サイン会行きました】

「プロブレム」からテーマ曲が控えめに流れます。

ええ、書店の中ですし、普通に他のお客さんもいるので、爆音は出せませんね。

そして、徳間書店の方とカシン選手から挨拶。

オーダーメイドのチャンピオンベルトを、このためにわざわざ持ってきてくれたとのこと。

1番目なので後ろの列がどこまでいったのかは確認できませんでしたが、女性の方もチラホラいました。

心臓バクバクしながら、カシン選手の前へ。

本にサインをしながら、
「○上さん、元気?あのプロモーターの」
「あ、わたしはあの時お手伝いしたっきりなんです」

昨年の王道プロレスのことを覚えておられた!!

ありがたや、ありがたや。

しばらくは語彙力低下してました。

その後、TSUTAYAにも行かれたたようですね。

ご紹介ありがとうございます!

後で写真を見た夫が、
「このオーバーマスク、早稲田のWじゃね? 色もエンジだし」
と言ってました。

そっちー!?

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