「こぎん刺し」をはじめて知る #栃木SC サポーターに向けて、こぎん刺しをざっくり解説します


9/30、J2リーグ栃木SCホームゲームの弘前物産展に参加すべく、
これからスタバdeこぎんメンバーが宇都宮に向けて旅立ちます。

栃木県と弘前はそれなりに遠いので、
「こぎん刺し」という言葉をはじめて聞く方もいるでしょう。

そこで、「こぎん刺し」について、僭越ながら津軽在住道産子のわたしからざっくりと解説をします。

前半はこぎん刺しの生い立ち、
中盤は現在のこぎん刺しブームとスタバdeこぎんの紹介、
後半は栃木に持って行くアイテムの一部を紹介、
となります。

それではどうぞ!



こぎん刺しとは、江戸時代から伝わる津軽の農民の手工芸です


こぎん刺しの古作着物(こぎんの学校にて撮影)

こぎん刺しの古作着物(こぎんの学校にて撮影)


まず、「こぎん刺し」の「こぎん」は昔、津軽地方で野良着をこぎん=小巾(小衣・小布)と呼んでおり、そこに刺しゅうをほどこしたものを「刺しこぎん」→「こぎん刺し」と呼ぶようになったそうです。

江戸時代の津軽地方では綿が貴重で、農民は木綿の着物を着ることが許されていませんでした。

野生の麻や苧麻(からむし)で織って藍で染めた生地で着物を仕立て、
それではあまりにスケスケで冬が寒すぎるので生地の目を糸で刺し埋めたことが、こぎん刺しの始まりです。

長い冬を過ごす津軽の娘たちは、母親ほか先輩女性たちに幼いうちからこぎん刺しの手ほどきをうけました。

こぎん刺しが上手な娘は嫁に欲しがられると言われていたそうで、
花嫁修業の一種でもあり、
美しく刺した着物を来て里に出ることは勝負服でお出かけすることだったようです。

その技術の進歩はただの補強・防寒だけではなく、
数百種類もの幾何学模様を女たちの口から口、
手から手へと伝えられていきます。

つまり、同じ伝統工芸品でも専門職人が作ってきた津軽塗とは違って、
庶民の庶民による庶民のための手工芸だったのです。

津軽こぎん刺しの特徴


背中にも魔除けの祈りをこめた模様がびっしりと

背中にも魔除けの祈りをこめた模様がびっしりと


こぎん刺しの模様は生地の縦糸のすき間を、横に横に刺し埋めていくことで描かれます。

基本的に奇数で描く模様で、織り糸の関係でやや縦長の菱型になります。

なお、八戸など南部地方では「菱刺し」というものがあり、こちらは偶数の目で刺すので横長の菱型模様に仕上がります。


南部菱刺しの着物

南部菱刺しの着物


自然をモチーフとした伝統模様

こぎん刺しの模様(モドコ)は、農民から見た自然の図が取り入れられています。

  • 「豆コ」
  • 「花コ」
  • 「てこなこ(=蝶)」
  • 「だんぶりこ(=トンボ)」
  • 「田の畔(あぜ)」
  • 「井戸枠」
  • 「馬の轡」
  • 「猫のまなぐ(眼)」

などなど。

名前が伝わっていない模様もたくさんあります。

Koginbank さんのモドコDBには、日々古作こぎんから収集された模様がアップされています。 https://koginbank.com/modoko/
名の無い模様に「y06-08+19」と名前が振られているところ、プロトタイプっぽくてかっこよくないですか?


廃れてから復興したこぎん刺し

さて、江戸時代から明治初期まで実用として刺し継がれてきたこぎん刺しですが、明治になって綿が流通し、農民も綿の着物が着られるようになったことで急速に廃れていきました。

そりゃ、元はスケスケですからね。

昭和になってから民藝運動によってこぎん刺しの着物が「発見」され、その実用性と美しさを兼ね備えた庶民の手芸が再評価されました。

「こぎん刺し刺繍」として手芸本も出版され、全国の手芸ファンに認知されていきます。

昭和当時の「暮らしの手帖」にも取り上げられたそうです。

麻の着物を着ることがなくなってからも、津軽地方では小中学校の家庭科でこぎん刺し教える学校もあり、その模様は伝えられてきました。

こぎん刺しをほどこしたバッグや財布、ネクタイ、ランチョンマットを作るなど、手芸として愛される一方、古作のこぎん刺し着物は博物館や資料館に保存されています。

ここ数年はハンドメイドブームでまた評価が上がり、この幾何学的なこぎん刺し模様が北欧調インテリアにマッチすると人気が高まっています。

伝統模様をかわいくアレンジした作品もさまざまなテイストのものが出ています。

スタバdeこぎんはこぎん刺しファンのサークルです

津軽地方の城下町である弘前市は、市の窓口、ホームページ、JR弘前駅、街の歩道など、いたるところにこぎん刺しやその模様がいたるところにあります。

2015年に弘前で初めてできたスターバックス弘前公園前店は、こぎん刺しのカバーをつけたベンチも。


こぎん刺しベンチでこぎん刺し

こぎん刺しベンチでこぎん刺し


「ここで友だちとおしゃべりしながらこぎん刺しをしたらおもしろいだろうな~」
というノリで、スタバdeこぎんという活動をお店とは関係なくスタートしました。

月1回、平日の午前中に集まり、
ただそれぞれがドリンクを注文して、
こぎん刺しを刺して、
お昼前には解散する。

それだけの自主サークルです。

初心者もいれば、こぎん刺し作家もいます。

しかし、3年で34回の例会を重ねて
ブログやSNSで発信し続けたことで、
通算の参加者は40人を超えて、
1度に10人以上は集まるようになってきました。

今は弘前公園前店からの依頼も受けて、
こぎん刺しワークショップもお店で開催しています。



こぎん刺し×サッカーのクロスミックスがおきた2018年


こぎん刺しとサッカーアイテム(こぎんフェス2018にて撮影)

こぎん刺しとサッカーアイテム(こぎんフェス2018にて撮影)


さて、ここでサッカーとのご縁です。

2018年のブランデュー弘前FCユニフォームには、こぎん刺し模様が一面に描かれています。

この図案はKoginbankさんによるものです。

桜色のベースにテコナコ(蝶)、蜘蛛刺し、トマラズのモドコが入っています。


ワールドカップ日本代表で大活躍した青森県出身の柴崎岳選手コラボレーションモデルとしてアンブロから発売された『U by GAKU(ユーバイガク)』にも、「結び花」「籠目」などのこぎん刺し模様が入っています。

こちらはkogin.netの山端家昌さんが監修されています。


屋外スポーツであるサッカーと、
冬を越す為に屋内で刺しつづられてきたこぎん刺し。

この2種類が出会った2018年、平成最後の夏でした。

ブランデュー弘前FCホームゲームでこぎん刺し!

ブランデュー弘前FCオーナーの黒部さんから声をかけていただき、
わたしたちスタバdeこぎん のメンバーがブランデューカラーのこぎん刺しグッズを販売したり、
ワークショップでサポーターにこぎん刺し体験をしていただきました。

サッカーの試合会場で伝統工芸体験をやることってめったにないのでは!?

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今日の #こぎん刺し ワークショップは、グレイヘアの男性の方。 こぎん刺し初体験ですが、1時間と少しでブランデューカラーのテコナコを完成? 後でお名刺を見たら、お隣の?マツダさんの役員の方でした❗️ ⚽️試合は3-0でブランデュー弘前が勝利? 勝利のラインダンスも見られました? こぎん刺しグッズも多くの方にお買い求めいただき、売上の一部をチームへの応援金?とすることができました✨ また、機会があれば、よろしくお願いします? #ブランデュー弘前 #スタバdeこぎん #サッカー #社会人サッカー #こぎん刺し初心者

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そして宇都宮へ…

さらに、
9/30の栃木SCホーム戦でのイベント「弘前物産展」にも呼んでいただいて、
さしぼぅさんと十和田在住のメンバーが宇都宮に向かいます。

このために栃木SCのカラーでもこぎん刺しグッズを制作しました。

4人で刺したその数は330点超!

とは言え、わたしは11個しか刺せてないので、
さしぼぅさん、スワロウテイル内本さん、Garden Gardenのreiさんの
こぎん刺し作家メンバー3人で300点を刺して仕立てています。

すべて手作業です。おそろしや。

スタバdeこぎんは趣味サークルで、
メンバーはほとんどが主婦です。

さしぼぅさんも小1娘のママです。

日曜に宇都宮に行って帰ってくるのは無理かと思っていましたが、
「家族の了解がとれたので行きます!」
と軽やかに手を挙げてくれました。

「ブランデューさんに委託販売する手もあったのに、
わざわざ交通費かけて夜行バスと列車を乗り継いで弾丸ツアーまでして、
どうして行く気になったの?」

と聞いたところ、

「おもしろそうだから!」
と言い切ったところへ続けて、
たぶん、栃木の人にとって、こぎん刺しってはじめて見る方が多いと思うんですよ。
そこにはやっぱり刺した自分もいて、その熱もこめて届けたいです

と語りました。

じゃっかん人見知りですが、中は熱いさしぼぅさんです。

こんなこぎん刺し作品を持って行きます

持って行くこぎん刺し作品は、
伝統的な模様のフレームもあれば、
12番目の選手=サポーターを表す「12」を刺したヘアゴムもあります。


タオルマフラー留めにこぎん刺しヘアゴム

タオルマフラー留めにこぎん刺しヘアゴム

ヘアゴムはタオルマフラー留めにもなるので、ショートカットの方、男性の方にもおススメです。

他に手首につけたり、ちょっとした小物を縛ったりもできますよ。


前にしか進まない勝ち虫として武具にも描かれただんぶりこ(津軽弁でトンボ)模様のグッズもあります。

栃木SCカラーをイメージして。

ブランデューカラーで、ユニフォームにも入っているテコナコ(蝶)の柄も。


このあたりの大き目なものはすべて一点物になります。

スワロウテイルさんからはユニオンジャックと並んで人気なこぎん金魚が多数!

こぎん金魚も伝統の赤、ブランデューのピンクがあります。

8月のねぷた祭りにおいでの時はぜひ身につけていらしてください。


わたしはこちら。


弘前に来たらいっしょにチクチクしましょう

わたしにとっても、このご縁がなければサッカーの試合を生観戦することはありませんでした。

他のメンバーも同じです。

何度もブランデューさんのホームゲームに通ううちに、すっかり楽しくなり、最後はリーグ優勝の場面も間近に見ることができました!

この機会をいただいたことに感謝しつつ、
関東の方々にこぎん刺しの楽しさを感じてもらえたら幸いです。

同じテントで販売している弘前のお菓子も地元民が愛するおいしさですので、ぜひごいっしょにお楽しみください。

そして、いつか弘前に遊びに来ていただけたら、いっしょにスタバでこぎん刺ししましょう!

【参考サイト】

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