?
GM:洞窟を抜けると、夢に見た光景と同じ。陽の光が降り注ぐ谷間の草地にでます。広さはだいたい家2軒くらい立ちそうな広さです。
エフィーネはなつかしそうに「もう何年ぶりになるのかしら」とあたりを見回しています。春霞樹の若木が立っていて薄桃色の花を咲かせています。そして中央には石積みの小さな碑が建っています。
ヴォーケン:石碑か。ちょっと読んでみよう。
GM:そこには「うまれいずることのなかった わたしの むすめへ」 と書いてあります。
ヴォーケン:は?! 「この碑に書いてあることの意味は、エフィーネさん、わかるんですかのう?」
GM(エフィーネ):「むすめ、ですか?」
ヴォーケン:「昔からあったんですかのう?」
GM(エフィーネ):「いいえ。…これ、あの人の字だわ…」 呆然として見つめていて、やがて瞳から大粒の涙をぽろぽろとこぼれさせます。
ヴォーケン:じゃあ、その肩に手をおいて、「実は、夢に関してあの時はしゃべらなかったことが一つだけあるんです。その夢は最後までいくと、女の子の声で『おかえり、パパ』 と聞こえて、振り返ったところで終わるんですよ。年はカッシュ君より上くらいで。なにか覚えはないですかのう」
GM(エフィーネ):「そ、そうだったんですか」 とボロボロもう泣き始めてしまって、言葉が出ないという感じです。
ヴォーケン:困った。ロイドさんにこっそりと 「なにか覚えがあるんですか?」
GM(ロイド):「実はですね…」と話し始めます。実は夫婦の間に初めて生まれた子がカッシュ君なわけですが、その前に生まれなかった子どもがいたわけです。
ヴォーケン:死産ですか?
GM(ロイド):「その頃は飢饉にみまわれていて、とてもじゃないが子どもを産めるような状況ではなかったのですよ。わたしたち大人でさえ食うや食わずの日々でね。だから、呪い師のお婆に頼んで…」
ヴォーケン:ははぁ。
GM(ロイド):「もちろん、エフィーネさんはとても悲しんでいた。だが、カッジィがそれを忘れさせようと努力していたんだな。だから、その話はここ6年間、まったくすることがなかったんだよ」
ヴォーケン:「産まれていれば5歳か6歳というところですか」
GM(ロイド):「たぶん、この樹と同じくらいだろうね」 と、石碑の横に立つ春霞樹を見ます。人の背の高さくらいの若木です。
ヴォーケン:石碑は新しいですか?
GM:新しくはないです。つる草もまとわりついている。その石碑の前には、小さな人形やきれいな石をつなげてつくったようなアクセサリーがちょっとずつ飾られています。
ヴォーケン:非常に気まずい思いをかかえながら、<やるせなさ>を1D6増やそう。
GM:それゲーム違います。エフィーネさんは、「こんな風に思っていてくれていたなんて…」とわんわん泣いています。
ヴォーケン:困った…。当初の目的の旦那が死んでいるかどうかはさっぱりわからないぞ。当たりを探ってみる。
GM:石碑の前に飾ってあるものは、ちょっとずつ成長しています。最初はおくるみだったのが、小さい靴になり、アクセサリーになり。
ヴォーケン:5歳くらいの女の子にあげるようなものはありますか?
GM:飾ってあるものは三つです。
ヴォーケン:ああ、そうか。……そうだ、ぼくの短剣はなにか反応がないのかね?
GM:じゃあ、【心魂】でロールしてください。
ヴォーケン:がんばります。とうっ(コロコロ)……、そうだ、僕は鍋を持っている。<鍋>でリロールできないだろうか?
GM:ムチャいうな。
ヴォーケン:平和になって欲しいという僕の心で<平和>でリロールを…。
GM:わかりました。<平和>でのリロールをどうぞ。
ヴォーケン:とうっ(コロコロ)ピンゾロだぁ! そうだっ、レベル1でのリロールをっ!
GM:どーぞ。
ヴォーケン:(コロコロ)8、微妙だ。合計12っ。
GM:「この剣を持っているあなた」が、かつてここに年に一度来ていた。そして、いまがその日であると感じます。
ヴォーケン:ふーむ。……なにか、5歳くらいの女の子にあげられるようなプレゼントはこのへんにありますかのう?
GM:そうですね。お花は咲いていますね。
ヴォーケン:せっせと花輪をつくる。
GM:えーと【心魂】でロールしてください。
ヴォーケン:15。
GM:じゃあ、すみれ色とピンク色の可憐な花輪をつくることができました。
ヴォーケン:それをアクセサリーの隣に、「ただいま」と言って置く。
GM:すると、一陣の風が吹き抜けて、春霞樹の淡い花びらをざあっと巻き上げていきます。それは薄桃色の小さな雲のように、谷の上まで舞い上がります。そのとき、あなたがたは小さな女の子の声を聞いたような気がします。
(少女):「ありがとう」
ヴォーケン:じゃあ、おずおずとエフィーネさんの肩に手をおく。「今度来るときにはカッシュ君ともいっしょに来るといいよね」
GM(エフィーネ):こくこくとうなずいて、「ありがとうございます。本当に、ありがとうございます」と涙声でつぶやいています。ロイドさんも石碑の前にひざまずいて祈りを捧げています。
ヴォーケン:エフィーネさんに鞘に入った短剣を渡して「これはあなたが持っているべきでないかと思うんですがのう」
GM(エフィーネ):「ありがとうございます」とそれを抱きしめます。
GM(ロイド):「またこの道を通れるように土砂をのけないといけませんなぁ」
ヴォーケン:「そうですのう。また春霞樹の咲く季節に来なければならないですのう」と風に吹き上げられた春霞樹の花霞を見上げながら。
GM:さて、帰り道は何事もなく、夕暮れ時に村に帰ってきました。
ロイドさんの家に行くと、砂遊びをしていたカッシュ君が、
「ママーっ、おかえりーっ!」と走ってきます。
エフィーネさんはちょっと胸が詰まったような感じですが、にっこりと笑って受け止めて、
「ただいま」とこたえます。
ヴォーケン:うむうむ。さて、わしはどうするかいのう。
GM(カッシュ):「じゃあ、おうちに帰ろうっ!」
ヴォーケン:「うん、帰ろう」 カッシュ君を真ん中に3人で手をつないで帰ります。
GM(カッシュ):「あのね、ママ」 と左手のエフィーネを見上げます。「お姉ちゃんが、パパを呼びに行くんだって」
ヴォーケン・エフィーネ:「は?!」
GM(カッシュ):「『パパを迎えに行く』ってお姉ちゃん言ってたよ。パパ、早く帰ってこないかなぁ」
ヴォーケン:……ここの旦那に収まる計画は無くなったなぁ。
GM(エフィーネ):「そう。パパ、帰ってくるんだ。そうだよねぇ」とにっこり笑って言います。
ヴォーケン:「そう。パパ、帰ってくるんだ。そうだよねぇ」と寂しそうにつぶやく。
GM(エフィーネ):「じゃあ、パパが帰ってきたら、おかえりって言ってあげようね」
GM(カッシュ):「うん!」
GM:夕陽に照らされた三人の長い影は、春霞亭に帰る道をゆっくりと歩いていくのでありました。
<“おかえりの樹” 終わり>