TRPG Note


カード仕掛けの海洋冒険

海洋冒険は難しい?

 夏休み! といえば、太陽、入道雲、海! ってわけで、夏になると大海原を冒険の舞台にしたくなるもの。風をうけて広がる帆、水先案内のカモメ、海賊との戦い、秘密の宝島‥‥‥スカッと晴れた青空のような爽快なセッションをしたいってうずうずしてくるのです。

 しかし、わたしは今までこの海洋冒険シナリオに2度挑んで、イマイチな結果になっているのです。
 1度目はFローズで「海」の地縁カードを使用してランダムイベントと本筋のシナリオをからめてみました。(南の島へ) しかし、早々に船がランダムイベントで座礁し、途方に暮れてしまいました。結局、NPCを登場させて助けに入ったのですが、ちょっとご都合主義的な展開でした。
 2度目はFローズの同人サプリメントを使用して望みました。前人未踏の島を探索して、地図をつくっていこうというちょっと変わった内容のシナリオ。しかし、シナリオの中身と航海部分のからめ方、シナリオ本体のゲームとしての詰めの甘さが出て、途中でセッションを止める結果となってしまいました。これまでGMをしてきて、セッションが続けられなくなったのは初めてでした。
 一度しか集まれない参加者に迷惑をかけてしまった、ショックのあまりしばらくGMをする自信を無くしてしまいました。

3度目の挑戦!

 そしてまた夏が来ました。
急ごしらえのGMなどのセッションを経て自信を回復してきたわたしは、3度目の海洋冒険に挑戦することにしました。だって、負けっぱなしは悔しいじゃないですか。
 今回のシステムはモンスターメーカーRPG。Fローズと違って海を舞台にしたカードやサプリメントはありません。よし、この機会に1からつくろう! と、海洋冒険用のゲームをつくる決意を固めました。
 まず、これまでの失敗点を反省して、ポイントになりそうな場所をあげてみます。
1:航海日程の管理‥‥‥何日間で航海をするのか、一日でどれだけ進めるのかを設定しておかないと、フィールドが広いのでどこまでも行くことができてしまう。
2:PCが活躍できるイベント‥‥‥船に乗ってしまうとPCが直接戦ったり、操船するわけではないので、PCが絡めるイベントをつくる。
3:海での冒険‥‥‥これまでの二本は島での冒険がメインだったので、海のイベントが中途半端になっていた。

とにかく、前回の失敗は目の付け所ではなく、ゲームとしての条件設定の甘さにあったと思う。たぶん。今回の目標はゲームとして楽しめることを目指すのだ。

素材集めは人の手も借りて

 まず、シナリオの基本路線を固めます。
「かつて海賊王と恐れられていた海賊団の財宝が一部発見された。ブルガンディ市では、財宝探しの大会を設定し、冒険者たちの勝手な探索を制限する。PCたちはこの財宝探し大会に出場して、大会期間内になるべくたくさんの(そして価値ある)財宝を集める」

裏ストーリーなどはあまり考えない。今回は筋に凝るシナリオじゃない。PCはランダムなミニイベントに遭遇しながら、財宝を探していくという設定。
 さて、海洋冒険といえば、どんなイベントがあるでしょうか?
まず、海賊でしょ、幽霊船でしょ、巨大なタコとか、宝島の発見とか、ああ人魚にも会いたいな‥‥‥と、思いつく限りのイベントをリストアップしていきます。
財宝も考えなくちゃ。金の王冠、金銀・宝石が詰まった宝箱、美しい女神像などなど、むかし読んだ「宝島」の挿し絵を思い出しつつ、エクセルに入力していきます。 同じようにモンスターもリストアップ。しかし、船ごと襲われるのならPCがどうやって戦うかに悩む。射撃か魔法くらいしかないよなぁ。
だんだん考えも煮詰まってきました。もう2日後には出発だというのに、カードの使い方も決まっていません。これはピンチ!
助けを求めて、プレイヤーの皆さんにメールを出しました。

プレイヤーの皆さま
おひさしぶりです。(略)さて今回の舞台は、世界のど真ん中の地中海。
内海ですが、とても大きく「海洋」の言葉がふさわしい海です。
ここで、PCの皆さんには宝探しの冒険をしていただきます。
果たして海賊王の残した財宝はどこに眠るのか?
あ、「ワンピース」じゃないですよ。いちおう。
いま、一攫千金を狙う冒険者たちが集い、壮大な宝探し大会が始まった!
ってな内容です。
ネタバレも何も、わたしもまだどうなるかわかりません。てへ。
なにしろ、ランダムイベントをいっぱいつくって、ストーリーラインは出たとこまかせなシナリオです。
イベントもそろそろネタにつまってきました。
ぜひ、皆さまのアイディアもお寄せ下さいませ。

1:海で出会うものと言えば?
例)巨大イカ、海賊

2:海賊王の財宝にはどんなものがある?
例)金貨の詰まった宝箱、こぶし大のブルーダイヤ

3:航海中にはどんなことが起こる?
例)人魚との遭遇、座礁、凪で進めない

『夏休み』にふさわしい、楽しいセッションをしたいですね。
よろしくお願いします。

ありがたいことに、それから1日のうちに全員からお返事がきました。
なるほど人の考えることはそれぞれ。思いつきもしなかったアイディアがたくさん寄せられたのです。
今回の仲間うちでは、わたしがGMするのは初めて。メールに添えられていたご期待の言葉にプレッシャーも感じつつ、カード作りを始めました。

図画工作なシナリオづくり

イベントカード  最初に考えたのは、すごろく形式。大きなボードをつくって、マスを船が移動しながら、イベントカードを引く。だけど、今回は一直線に目的地へ進むのではなく、広いところを行ったりきたりするわけだから、これは合わないような気がする。
カードゲーム「モンスターメーカー(1)」の回廊カード方式も考えた。山札から引いて、そこに書かれている移動距離の分だけ進めるとか。どうも、しっくり来ない。何より回廊カードをそのまま使ったら海らしさが出ないし、オリジナルのカードを同じだけつくるには画用紙が足りない。
Fローズの地縁カードのように、一枚のカードに6つのイベントを書いて、ランダムにイベントを発生させるか‥‥‥6倍もイベントを考えるのは嫌だ。
青い画用紙を切っただけのカードをああでもない、こうでもないと並べながら考える。
まてよ、ボードゲームでは、マス目にイベント発生条件が書いてあるのがあったなぁ。「サイコロで1が出たらモンスターが出現」とか。あのやり方なら、6倍もイベントを考えずに済むぞ。よし、そうしよう!
エクセルのデータをレポート紙に書き写し、それを青いカードに張りつけて、フィールド兼イベントカードが完成。さらに小さく切ったカードを財宝カードにしました。

大会ルールはどうしよう?

 同時に全体のルールも考える。
1日3ターン、大会は5日間で、つまり15ターン。基本的に1ターン1マス(カード)の移動。ダイスを振ってカードの表に書かれている数字が出たら、裏返してイベント発生。中には必ずイベントが発生するカードや、夜なら発生するというカードも。
「トツゲキトビウオがぶつかってきた!」なんていうカードに書かれている情報で終わるイベントもあれば、「幽霊船があらわれた‥‥‥近づきますか?」とミニシナリオにつながるイベントもある。ミニシナリオの詳細はメモ帳に書き込んでいく。
シナリオ中に「財宝*1」とあれば、財宝カードをランダムに引く。財宝はランクづけされていて、大会最終日のオークションで値が付けられる。ランクAなら1D6*100金貨、ランクCなら1D6*10ダルトという感じ。
財宝の横流しや他の参加者を殺したりしたら失格です。

 海の上でのイベントを考えると、どんな船に乗るかも考えなくちゃ。船によって得意なイベントがあったりして。そうだ、セッションの前半は街での情報収集と船選びをしてもらおう。
前回Fローズで使用した海洋冒険サプリメントには、船をPCのようにデータ化しているのが紹介されていた。ああいうのを考えてみようか。
ふっと「船長が新日本プロレスの永田選手みたいに敬礼するクセがあったらうけるかなぁ」と、よからぬ考えがおこった。そう、わたしもかなりのプロレス好きだけど、彼らはさらに上を行く強者のプロレス好きだ。(そうじゃない人もいるけど)‥‥‥楽しそう。それからは、ぽろぽろと船の名前や乗組員の名前、特徴が思いついた。
売り出し中の若者たちの「黄金の卵号」(G-Eggs)、様々な海で経験を積んだ船乗りが集まる「暁のコウモリ号」(BATT)、小柄だが素早い「大波号」(WAVE)‥‥‥ライバルは荒々しい「恐れ知らず号」(ノーフィアー)だな。「2000年紀号」もあったんだけど、船長のアゲハ(蝶野)負傷により欠場ということにしよう。と、余計な設定がふくらんでいく。ちなみに船名は全部プロレスの軍団からきています。
船ごとの「運動力」「知覚力」「体力」「精神力」を決める。総合力は全部同点だけど、能力値の振り分け方に特徴を出す。たとえば「暁のコウモリ号」は寄せ集めだから精神力(団結力)が低いとか、「黄金の卵号」はマッケンローがいるから体力が高いとか。「巨大な渦巻きが!」という船ぐるみのイベントには、船の能力値でロールしてもらおう。
あと、基本の移動力はどの船も1ターン1マスだけど、体力のロールに成功したら1D3マス進めるというダッシュルールもつけました。がんばって漕ぐわけです。
船のキャラクターシートに乗組員の名前と似顔絵を描いて完成。
時間の管理も、1日3ターンに区切ったカレンダーをつくり、マーカーをプレイヤーに移動してもらうことにしました。
北海道から青森にむかう長時間移動の中で、メモ帳にせっせとシナリオの詳細を書き、着いてからもセッション当日まで、カードの装飾を書き込んだり、船のユニットづくり(三角形の駒)に精を出しました。こういう作り物って好きなんです。小学校で図画工作が一番苦手だったのに。
今回用意したアイテム今回用意したアイテム
・モンスターメーカーRPG ・サプリメント「ブルガンディドリーム」 
・ウィッチクエスト2の都市カード ・カレンダー 
・船のキャラクターシート(3枚) 
・イベントカード(21枚) ・財宝カード(18枚)
・船ユニット(2個) ・シナリオメモ帳

さあ冒険だ!

さて、いよいよセッションです。なんとプレイヤーは7人! 予想よりも多いです。
1時過ぎからキャラクターメークを始めて、セッション開始は3時ごろ。
一瞬、2チームに分けようかとも思いました。でも、時間切れになるおそれもあるし、プレイヤーの待ち時間が多くなるので、1チームで望むことにします。
ブルガンディ市での情報収集は、モンスターメーカーRPGのサプリメント「ブルガンディドリーム」と、ウィッチクエスト2の都市カードを使用しました。「ブルガンディ~」は詳しい店の紹介など街の雰囲気が良く出ているサプリメント。どんな場所に行けるかを一目でわかるように「酒場」「公園」「港」などの都市カードを並べます。これだけたくさんのプレイヤーが参加するなら、だれがどこに行っているかの目印にも便利です。
大会目前にして、まだ仲間も船も見つけていなかったPCたちがパーティーを組んでから、大会にエントリーをするまで一日。これも3ターンです。
7人のキャラクターがそれぞれ1~2人で行動して、船との交渉をしたり、海賊王の情報を集めたり、港でケンカ騒ぎを起こしたり、ダンスホールでパトロンを捕まえたり、大会のエントリーをしたりしました。
プロレスネタの乗組員はうけてもらえたので満足。当初の予想よりプロレスファン率が下がっていたので、Notプロレスファンなプレイヤーには内輪ネタで失礼しました。あまり脱線しすぎないように気はつけたつもり‥‥なんだけど、はたから見たらそうでもないか。
船は「ハッキリ言って」が口癖のスパルタン船長率いる「大波号」に決定。運動力の高さが決め手、だったよね、きっと。
大会当日、号砲とともに船が出港! という場面ですでに5時くらい。セッション終了の目標時間は7時~8時なので、内心ちょっとあせってきました。
4枚×4枚、計16枚並べた海洋カードと、カレンダー、船ユニットを取り出すと、みなさんびっくりしていた様子。こういう小道具使いなGMスタイルは初めてとのことです。
 情報収集で、南西が怪しいとにらんでいた一行は、1マスずつ進みます。イベント発生を決めるダイスは、交替で振っていました。しかし、何も起きません。しゃべるイルカとあっちむいてホイをしたくらいで2日目が終わると、だんだん心配になってきました。(うーん、イベント発生条件の目をもっと増やした方が良かったかなぁ、期間を伸ばした方が良かったかなぁ) しかし、今さら変えられません。
さいわい、中盤からはイベントが起こるようになりました。大イベントのひとつであった沈没船の探索にも結びつき、たくさんの財宝を引き揚げる。帰りがけには、シャチに襲われている人魚を助けるという戦闘イベントもあり、なかなか盛り上がることができました。
 大会後のオークションでは、かなりの大金を入手。7人で分けても金貨70枚近くになりました。1金貨1万円相当です。
 セッション終了はちょうど8時15分前。わたしはふだんコンベンションでGMしているためか、制限時間内に終わらせることに執着します。
実は、帰港直前にならず者の「恐れ知らず号」との追いかけっこしながらの戦闘、という特殊イベントも考えていたのですが、時間もせまっていたし、すでにシャチとの戦いで盛り上がっていたので割愛しました。さくっと。

海洋冒険にリベンジ!

 セッションが終わったときには、プレッシャーからの解放もあって、とても充実した気持ちでした。「期待にこたえなきゃ」という部分もさることながら、「海洋冒険にリベンジしなきゃ」っていう気持ちが、けっこうプレッシャーになっていたのですね。
 反省としては、前半のあせりのせいか沈没船で財宝を気前よくあげすぎたところ。設定した愛着もあって、ついつい出したくなってしまう。
 また、PCが7人もいてヒーローポイントをもっているので、14個のヒーローポイントでかなりの条件をクリアされました。このへんはまた要調整というところです。
 それにしても、3度目の挑戦にして、やっと海洋冒険シナリオで楽しいセッションができました。プレイヤーの皆さんには感謝です。とくにネタ提供から参加してくれた皆さんに。メールを読むのはたいへん楽しかったです。

それに、前回、前々回のプレイヤーの皆さんにも。おかげさまで成長しましたので、また遊んでください。このシナリオはまだまだ使えますので。

セッション日:2001/08/12  レポート:2001/08/21


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