Far Roads to Lord 冒険記録集

恋多きヒロイン

date:'94/09/01   GM:うらべっち


 うら若き娘、ステーシヤは旅芸人一座「メルララの歌」のヒロイン。「緑の風の音の街」メディリオノイルで、今日も華と恋をふりまいている。
ある日、彼女はパン屋のリュノルに一目惚れ。夜店で買った風鳴琴で恋歌の演奏を聴かせようとするが、実はその風鳴琴は盗品だった。

 街中を散策するステーシヤ。噴水広場で語り部ボラボラじいさんに会いうわさ話を拾い集めた後に、かねてから噂を聞いていた「リュノルのパン屋」に入る。恋い多き彼女は、若い店主リュノルの微笑みと愛情たっぷりの仕事ぶりに一目惚れ、ラム酒パンとテンパイを山ほど買い込む。
宿に帰ると、仲間の半鬼パギーナの冷たい視線を受ける。
「またなの?」
恋するステーシヤに皮肉は届かない。彼女は赤いバラを一輪くわえて踊り、幸せに酔いつぶれる。

 夜店で風鳴琴を金貨5枚はたいて買い受けるステーシヤ。舞台で演奏を披露して、招待したリュノルに聞かせるつもりだった。しかし、一座の公演と他一座の公演がかちあうトラブルから、劇場全体をまきこむ喧嘩騒ぎになってしまう。
血の気の多いパギーナは乱闘の中、噂の「愛しの君」とも知らず、リュノルをはり倒してしまう。
「なんてことしてくれたのよ、もう!」ステーシヤは地団駄をふむが、後の祭り。

 「その風鳴琴、どこで手に入れた?」
酒場で声をかけてきた男は、鋭い目つきと鍛えた身体の北方人。風鳴琴をパギーナに見せびらかしていたステーシヤは、ふりむいた一瞬「いい男☆」と態度を変える。
だが、彼には連れの女がいた。可憐な森妖精の少女ナナカマドは彼と旅をしている途中で、この風鳴琴を盗まれ、探しているところだったという。
「どうしても、果たしたい用があるの。もう一日待ってくれない?」
「どうしても」の用、それは愛しのリュノルに風鳴琴の演奏を聴かせることだった。

 次の町に旅立つ前に昨日のお詫びを、とステーシヤはリュノルの店を訪れ、風鳴琴を演奏する。せつないステーシヤの恋心も知らないリュノルは、にっこりと笑ってお礼に特製げんこつパンをくれた。顔で笑って心で泣くステーシヤ。
 ナナカマドに風鳴琴を返しに行くと、彼女は高熱を出して寝込んでいた。流行り病にかかったらしい。診察を受けると、薬草ファバルの根が必要と言われ、連れのアストゥールと近くの森に向かった。

 幾度か野獣との戦闘はあったが、二人は順調に森の中を進む。途中、虎と遭遇するも、ステーシヤは威厳で屈服させ、薬草探しの手伝いまでさせる。虎の協力もあって薬草を発見、持ち帰った根を煎じて飲ませると、ナナカマドは安らかな寝顔になった。

 ナナカマドは元気になると、ステーシヤの宿に挨拶に訪れた。お礼に風鳴琴を譲り受ける。この風鳴琴には精霊が宿っているため、よからぬ心の人物に使われることを心配していたのだ。
「あなたならきっとこのエアリエルを美しく成長させてくれると思うから」
と微笑んで、彼女はステーシヤに風鳴琴を手渡した。

 旅芸人一座「メルララの歌」の旅立つ日。
ステーシヤは、いつぞやバラを買い込んだ花屋で忘れな草を購入した。そして、旅立つ前にリュノルに渡し、「あたしはしょせん旅ガラス」と悲恋に陶酔しながらメディリオノイルを後にした。リュノルに恋心が伝わることは最後までなかったという……。

旅人の記録
名前性別種族・出身名前性別種族・出身
ステーシヤ女・22歳人間・芸人 パギーナ半鬼
アストゥール男・26歳人間・戦士 ナナカマド森妖精


Back   Plaza