Far Roads to Lord 冒険記録集

蒼き狼人(ケレンダ)

date:'94/06/09   GM:うらべっち


 商人お抱えの芸人一座でその日を食いつないでいる戦士スコルド。だが、それまでの不幸な人生は彼を再び裏切り、商人隊はラムザスの草原で賊に襲われ全滅してしまう。彼自身もあわやというところだったが、ラムザス人の騎馬隊が族を追い散らす。
「おまえ、いい度胸だな。俺と一緒に来るか?」
若いラムザスの部族長から差し出された手が、スコルドの人生を変えるのだった。

 満月の夜中に草原を駆け抜ける駿馬二騎。
「俺たちラムザス人はこの夜空を、馬たちが草をはむ草原にたとえる。あのきらめく馬たちは、オザン神が朝焼けのカーテンをひくとまた牧場に戻るのだ、とね」
「‥‥俺の国ストラディウムでは帆を張った船が渡っていく海にたとえる」
「海か。また見たことがない。だが、俺はいずれこの草原を駆け抜けて、世界を見る。長老に言うと笑われるがな」
笑顔に少年ぽさが残るウルスボルトと、苦労人で老成した雰囲気のスコルドは馬乳酒を片手に語り合う。

 厳しい冬の訪れを前に、スコルドとウルスボルト、部族の若い男らは狩りに出る。鹿の群れを追い、駆け回る。はぐれた一頭を追いつめると、白い牝鹿は白い肌の娘に変じた。あっけにとられてスコルドがウルスボルトを見ると、彼はさらに呆然自失。リコルドは娘に謝り、傷の手当をする。娘は立ち上がり、ラムザス語でウルスボルトに堂々と立ち向かう。だが、彼はまったく魂を抜かれたように、反論しない。愛しさが激情している状態だった。ウルスボルトは彼女を放すよう命じる。名を問うと「クリュン」とだけ言い残して、白い娘は鹿に戻り駆け去っていった。

 リコルドがラムザスに暮らす間に一年が過ぎた。次の牧草地に羊を連れていく前に、リコルドと仲間たちはその地域の偵察に行く。と、三人の旅人が六人の賊に囲まれているところを発見し、駆けつける。手傷を負った若い騎士が、二人の娘を守り孤軍奮闘している。賊は、以前スコルドが襲われた連中だった。彼らは力を合わせて戦い、賊を退散させる。若い騎士は、スコルドと同じストラディウムの騎士、旧友のカルギアだった。

 かの賊の頭は、ウルスボルトと氏族長の座を争った叔父ウルジュだった。この男は、氏族を追われて闇の国デュラの手先となりさがっている。ウルジュは相手を畏怖させる邪眼の力を身につけ、ウルスボルトを打ち負かそうと画策している。報告を受けたウルスボルトは、翌日スコルドを呼んだ。
「お前が来てから一年が過ぎた。命を助けた恩にはすでに充分報いてくれた。この客人たちを無事に草原から送り、またお前も好きな生活に戻るがいい」
建て前の影に、身内の引き起こす争いを見せたくないという苦悩を見て、スコルドは草原を出ることを承諾した。その晩は二人、上等の馬乳酒を飲み語り明かした。

 部族を去ったその夜。白い娘にリコルドは起こされる。鹿の身になり、何度も来た道を戻っては振り返る。ただならぬ様子に、カルギアたちをその場に残し馬を走らせる。包(パオ)の群れが燃えている。反逆者ウルジュがデュラの軍を連れて攻めて来たのだ。仲間たちが縛られ、一人一人殺されていく光景に、怒りを抑えきれずリコルドは単身切り込んでいった。

 多勢に無勢の戦いで満身創痍となったリコルドは、死を覚悟して小刀を捕らわれた仲間の手元に投げる。が、次の瞬間、背後からデュラ兵の刃が彼の背に振り下ろされた。ゆっくりと光を失っていく彼の瞳に、吠えるウルスボルトの姿がぼやける。ウルスボルトが蒼き狼となりウルジュに跳びかかる光景がうつったかどうか‥‥

旅人の記録
名前性別種族・出身
リコルド人間・戦士


Back   Plaza