date:2002/01/03 GM:うらべっち
リラー地方の小さな町レキは、季節はずれの豪雪に降りこめられていた。帰らぬ父を待つ少女の願いに、4人の恐れ知らずが応える。吹雪の中、父の捜索に出かけた彼らは、雪原で精霊レクスィリアと出会う。
新しい年を迎えた早春の『白の月』。いくら北国のリラーとはいえ、5日間にも及ぶ猛吹雪は例がない。小さな町レキに住む人々は、越冬のために貯蓄していた食糧・雑貨の残りに不安を感じている。
旅芸人のマリアンヌが働いている宿屋『翡翠亭』でも、女将さんが食事の切り盛りに苦労していた。この町に医院を開業しようとしている半妖精ガイラムは、建築資材が届くのを待ちわびている。そして、新春の大市場を目指していた旅人のラルフ、ラルクスト、ニドは、吹雪のため町から出られずに足止めされていた。
そんなある日、『翡翠亭』に一人の少女リインが訪れた。この町で父娘2人暮らしのリインは、今年9つになったばかり。カウンターにすがりついて、「パパが帰ってこないの」と泣き出す。マリアンヌと女将さんがリインをなだめて話しを聞くと、馬そりによる運送業を営んでいる父・セルドが街から帰ってこないという。帰宅予定から三日が過ぎている。セルドが帰らなければ、食糧も建築資材も届かない。
吹雪の中、『翡翠亭』にいた有志4人は、セルドを探しに雪原に足を踏み出した。
身を切る寒風を避けて岩山に身を寄せた4人は、大きな影が上空から急降下してくるのに気が付いた。鷲の上半身と獅子の下半身、背中には空を切りはばたく翼……「グリフォン!」誰かが叫んだ。
髭小人のラルフは果敢にグリフォンと闘う。ラルクストは弓で、ガイラムは魔法で援護をするが、勝算はない。と、マリアンヌがグリフォンの前に立ち腕をひろげて語りかけた。
………数分後、すっかりなついたグリフォンが、マリアンヌに頬をすり寄せていた。
氷上の野営。ラルクストは食糧を求めて狩に出た。マリアンヌを筆頭に、残った者は食事の準備をする。しばらくして帰ってきたラルクストは、手ぶらだった。獲れなかったのかといぶかると、彼は持って来れなかったと言う。4人と一匹がその現場にいくと、強大な毛長象が横たわっていた。
あまりにも人間離れしたその腕前に、誰もが身体を震わせたのだった。
あたりの空気が一段と冷え込む。グリフォンに案内されていったところには、小さな雪の山があった。そして、その傍らには晶精レクスィリアがたたずみ、物言いたげにこちらを見ている。そのまなざしはマリアンヌたちが夢の中でみたものと同じだった。
小山をかきわけると、中からは氷漬けの仮死状態になっていたリィンの父があらわれた。
4人はたどたどしく精霊との交信を始める。どれほどの時間が過ぎたことか。しだいにレクスィリアは4人を信頼していった。精霊によると、この近くにある氷の迷宮の奥に眠る、氷雪の竜が目覚めたために、この異常な降雪が続いているという。
4人はレクスィリアから竜の鎮め方を教わり、氷原の迷宮に踏み込んでいった。
雪と氷から造られた迷宮の奥に、その竜はいた。やはり、氷から生まれたかのように青みがかった白の体躯。
4人は氷竜の調律を試みる。それは気が遠くなるほどゆっくりとした交流だった。ようやく魔力の歪みを写し取り、反転し、あるいは移し替えて竜を鎮めることに成功した。
洞窟から戻った4人は、リィンの父セルド氏とともに、グリフォンの背に乗って村に帰る。
セルド氏が生還し、ガイラムの医院を建てる資材も無事に届いた。
ラルフとラルクストは吹雪のやんだ雪原に再び旅立つ。
すっかりグリフォンになつかれたマリアンヌは、雇い主の宿屋の女将さんに別れを告げる。
「そうかい、いい人ができたんだね」
と、見送りに来た女将は、マリアンヌに頬を寄せる巨大なグリフォンに肝をつぶした。
北国の町に、ようやく冬の終わりを告げる南風が吹き抜けていく。
旅人の記録 | |||||
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名前 | 性別 | 種族・出身 | 名前 | 性別 | 種族・出身 |
ラルフ・ディクソン | 男性・85歳 | 髭小人・戦士 | ラルクスト | 男性・26歳 | 人間・狩人 |
ガイラム | 男性・120歳 | 半妖精(雪精) | ニド | 男性・26歳 | 人間・商人 |
マリアンヌ | 女性・22歳 | 人間・流民 |