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RtoL Magic Guide

ユルセルームの魔法

1.ユルセルームの成り立ち

 魔法について語るときは、まずユルセルームという世界の構成について語らねばなりません。
僕たちが生きる世界と変わらずに、ユルセルームにも風が吹き、波は押してまた引き、星がまたたいています。現代に生きる僕たちはこの現象の源について、科学者たちが研究してきた「解釈」を信じています。物質が原子と分子によってできているとか、地球は丸くて自転しているとか。しかし、それは人間が自然を理解するために考え出した言葉にすぎません。
 ユルセルームの人々は僕たちとは異なる解釈をし、異なる言葉をもっています。
ユルセルームは至上神ハヴァエルが顕した「波(エレ・ネア)」の狭間に誕生したと考えられています。波の立てた最初の音から「スィー・ラ」と呼ばれる七人の神々が覚醒し、かの地に降臨しました。調和をつかさどるイーヴォや変革をつかさどるデュールなどの神々ですね。そして、スイーラ七神がユルセルームに風や音楽や夢など、様々なものを創造していったのです。
 僕たちが知る自然の世界の他に、神々のおわす天界、あるいは霊界などユルセルームもさまざまな世界があると考えられているようです。

2.ユルセルームの魔法

 ユルセルームの「魔力」というのは端的に言うと、天界、霊界、自然界など大きな世界に在るエネルギーなのだそうです。たとえば木々が生長する力、夢を見る力、言葉や旋律が持つ心動かす力だとか。
研究家たちの間では「魔術」とは、その力をある一定の目的へと収束し、指向させるための手続きと定義されています。

 僕たちには「心性」と呼ばれる力があると、研究者は言います。僕はそれを大ざっぱに夢とか願いとか祈り、感情、霊感、第六感といったこちらの世界の言葉に置き換えて解釈しています。
「魔力」に触れたときに僕らの「心性」は、魔力を象徴的な形にして受け止めます。
現実に僕の視覚はリンゴを見たときに赤いと認識しますが、それは光が反射する波長を赤と認識しています。匂いを感じるのは、リンゴが空気中に放つ粒子を吸っているからです。それに似ているのではないでしょうか。
ユルセルームでは、同じ果実を目にしたときに感じる感覚が、こちらの世界よりもひとつ多いのかもしれませんね。とは言え、その魔力を感じる感覚の強弱は、僕たちと同様に人それぞれのようですが。

「果実から【赤を背景に白く輝く辺を持った正方形(中は青)】といったイメージを受け取ったら、それは大地の恵みをうけて調和のとれた美味しい果実だから、食べても大丈夫だよ」、とある人から聞いたことがあります。
そんな風に、ユルセルームに暮らす人は、感じた魔力を具象化して受け止めているのです。
色、形、あるいは具象などの象徴は「マジックイメージ」と呼ばれています。

3.受動的魔法と能動的魔法

果実の例のように、魔力を持つものにふれたときなどに意図せずにマジックイメージを受け取ることを「受動的魔法」といいます。
これに対して、「能動的魔法」というのは、このマジックイメージと自分自身の感情と意志を組み合わせて発動させるものを指します。「魔法」といったときにイメージするのはこちらの方ですね。
金色火炎四角 たとえば、おなじみの火の玉をぶつけるような魔法は、炎の力を持つ色彩“真の金色”、炎そのものを具象化した<火炎>、物質化するために<四角形>、対象を敵に定めて、「憎しみ」「怒り」の感情を込めて発動させるのです。
これも、一例であって、場合によっては<稲妻>を使ったり、“真の黒”を使うこともあるでしょう。
同じ<火炎><四角形>を組み合わせても、魔法の源となる色彩が“真の紫”であれば、火の玉ではなく風の刃となるかもしれません。
しかも、まったく同じマジックイメージを組み合わせても、そこに「怒り」をこめて敵にむけるのか、「慈しみ」をもって仲間に向けるのかで効果が違ってくるそうです。
このようにユルセルームの魔法はずいぶんと不確かなものです。周囲の影響で術者が思いも寄らなかった効果となることもよくあることだとか。
消費コストがどれくらいで、対象が何で、術者のレベルがどれくらいなら使用可能で、といった確かな目安がないのですから、慣れるまでには時間がかかるでしょう。
しかし、僕はそんな不確かさが「魔法」という言葉のイメージに合っているようで好きですね。母親が怪我をした子どもに「ちちんぷいぷい」と声をかけて痛みをなくしてしまうのも、りっぱな魔法だと思っているので。

参考文献:魔法使いディノン(著:門倉直人)
Far Roads to Lord「スィーラの芝居小屋」
「剣と魔法」(遊演体)

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