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TRPG Room

TRPGってどんな遊び?

 ここでは、たまたまフリースクールなどで検索して来た方や、わたしの知り合いでここに来たTRPGを知らない方向けに、このサイトの大半を占めるTRPGについてご説明してみましょう。

コンピューターは要りません

 まず、TRPGとはテーブルトーク・ロール・プレイング・ゲームの略です。
複数の人が「テーブルを囲んで会話」を通して「架空の人物を演じ」目標を達成する「ゲーム」です。さあ、よくわからない。
とりあえず、以下のことは頭に入れてください。
コンピューターは要りません。
パソコンも、プレイステーションも、ファミコンも、PCエンジンも要りません。
わたしは今まで何度も人にTRPGを説明してきたのですけど、一所懸命話して最後に「で、プレステとか要るの?」と言われて、へなへなと力が抜けたことがあります。
自分がすっかりTRPGのイメージを持っているだけに、相手のイメージとのギャップに気が付かなかったりするんですね。
この遊びは、紙と鉛筆とサイコロくらいがあれば遊べる、今時めずらしい素朴な遊びなのです。

人と時間は要ります

 さて、最初に「テーブルトーク」=「複数の人がテーブルを囲んで会話」と書きました。
複数の人ですから最低2人は要ります。でも2人では、ちょっとさみしい。ゲームの種類によって適当な人数は違いますが、だいたい4人~6人くらいが適当でしょう。
TRPGは、けっこう時間がかかる遊びです。自分たちの持ち駒である架空の人物を作るところから、本編の冒険を終えるまで、3時間から6時間くらいかかります。長い人は一晩中遊ぶこともできるそうです。
4人から6人くらいの友だちと、半日を過ごすわけです。社会人になるとなかなか遊びにくくなってしまうこともしばしば。

で、どんなことをするの?

 TRPGはゲームマスター(以下GM)と呼ばれる進行役がいます。他の参加者はプレイヤーと呼ばれます。
GMは、遊ぶ当日までに冒険の目的や障害などの準備をします。冒険中はプレイヤーの行動に対して成否の判定をしたり、プレイヤー以外の登場人物を演じたりします。
プレイヤーは、自分の持ち駒として架空の人物を作ります。その書き方は、ゲームの種類によって様々です。
「体力:6 知力:9 精神力:9 魅力:3」など、能力を数値に置き換えて表したり、
「鍵開け:30% 南方語:50% 馬術:10%」など、技能を表したり、
「狭量(卑怯な戦い方)、負けず嫌い、名誉欲」など性格やクセを表すものもあります。
これらの数値は、一定の数値を好きなように割り振ったり、サイコロを振って出た目を書き込んでいったりと、ゲームによって様々です。とにかく、この数値を元に、自分のキャラクター(持ち駒)が、どんな人物なのかをイメージします。
そう、さきほどから何度も「ゲームによって」と書いていますが、TRPGにはたくさんの種類があるのです。
剣と魔法と竜がいる中世ファンタジー世界から、現代日本の学園もの、ホラー、近未来SFなど、表す世界や判定の仕方などの特長が違う数多くのゲームがあります。
GMはそのゲームが表す世界に沿って冒険の概略(シナリオ)を作ります。
それでは、中世ファンタジー風世界のゲームを遊んでいるとして、その風景を紹介してみましょう。

プレイ風景・たとえば中世ファンタジー

 GM「さて、君たちは長い旅の中で、小さな町の酒場『白波亭』に着いた所だ。中は船乗りや商人でにぎわっているよ」
 プレイヤー1(男戦士のジョニー役)「ウェイトレスに『おう、ねえちゃん、こっちにエール、とりあえず5つ。あと、適当につまみもつけてくれ』」
 プレイヤー2(女妖精のセルファ役)「『わたしはエールなんか飲みたくないなぁ』ウェイトレスを呼び止めて、『ひとつ、ワインにしてくれます?』とお願いします」
 GM「(ウェイトレス役)『はい、エール4つとワイン1つですね』と、奥に引っ込みます。と、ウェインの服の裾をひっぱる気配がするよ」
 プレイヤー3(盗賊のウェイン役)「ちらっと目をやる」
 GM「小さな子どもの手だね。5歳くらい。(子ども役)『おじちゃん、向こうのおじちゃんがこれ』と、小さな像を渡す」
 プレイヤー3(盗賊のウェイン役)「なんだ? 向こうを見る」
 GM「それらしき人はすでにいない。像を調べる? それなら、『感覚』で判定して」
 プレイヤー3(盗賊のウェイン役)「(サイコロを振る)『感覚』を足して、……23!」
 GM「かなりの値打ち物。でも、小さな傷が頬のあたりにある」
 プレイヤー4(魔術師ウォルフ役)「『ほーう、これはおそらく魔法に関わるものじゃのう』と、『霊感』で調べて(サイコロを振る)32!」
 GM「いや、特に魔法の気配は感じられないよ(笑)」
 プレイヤー5(神官のケイン役)「『ウォルフ殿、いい加減なことを言われては困りますよ』」
 GM「そのとき、酒場の扉が乱暴に開けられる。『動くな!』武装した男たちが10人ほどなだれ込んでくる。さて、どうする?」
(以下略)

ゲームマスターとプレイヤー

 上の例はコンピューターのゲームでいうなら「ドラゴンクエスト」のようなファンタジーですね。このあとプレイヤーたちは、不思議な像をめぐる事件に巻き込まれていくわけです。
GMが作るシナリオというのは、こうした事件の設定を書いてあるものです。ドラマのシナリオとは違って、プレイヤーのキャラクターがしゃべる言葉は書かれていません。
どんな風に事件が始まって、どんな真相があって、どんな罠や怪物が現れるか、その強さはなどが書かれています。結末はガイドライン的に書くことが多いですが、プレイヤーたちの選択によって変わってくるため、予定していた結末になるかどうかはわかりません。
プレイヤーたちは、GMが語る情報から状況を判断してキャラクターの行動を決定します。武装した男たちが来たときに、おとなしくするのか、闘うのか、しゃべりごまかして過ごすか、判断するのです。
自分のキャラクターは無骨な戦士だからケンカをする、という人もいれば、老人の魔術師は呆けているふりをするかもしれません。さらに、このキャラクターたちはいっしょに旅をしている仲間なのですから、戦士がケンカをしようとしたら妖精の娘がたしなめるかもしれませんね。
そんな風にGMとプレイヤーたちは、架空の世界の物語を協同でつくっていくのです。
カードゲームのようにプレイヤー同士の勝敗や順位があるわけではありません。そして、GMがキャラクターをやっつければ勝つわけでも、プレイヤーがGMの怪物を倒せば勝ちというわけでもありません。
その場に参加した人がみんなで楽しいゲームの時間をつくれたかどうか。あえて言うなら、それがTRPGの勝敗かもしれません。

役割演技とゲーム

 「役割を演技するゲーム」とロールプレイング・ゲームを直訳すると、ちょっと意味が通りにくいですね。
上の例では、まだ事件が始まっていないので役割からくる行動はしていません。
エールを注文するのは戦士じゃなくてもできるし、像を調べるのは神官でもできるでしょう。
冒険がすすんでいくと、それぞれのキャラクターの得手不得手で行動が変わってきます。忍び足で怪物の前を通り抜けるのは盗賊の役割でしょうし、謎の巻物が出てきたら魔術師が読むでしょう。戦士はもちろん率先して怪物と闘うし、それで傷を負えば神官や妖精が奇跡や魔法で治すでしょう。
そんな風に違う特長をもったキャラクターが役割を演じることをロールプレイといいます。 ファミリーレストランのバイトの研修でもロールプレイといいますね。ウェイトレスという役割を演じる練習をすることで、仕事の技能を身につけるために。言葉としてはあれといっしょです。
そして、キャラクターの行動は、ゲームのルールに沿って判定します。剣を振る時に当たるかどうか、盗賊の鍵開けが成功するかどうか、魔術師の呪文が怪物に効くかどうか……。
GMは、そのゲームのルールに照らし合わせて、判定の方法を伝えます。
ゲームによってサイコロの使い方、種類、計算の仕方が違います。中には乱数発生装置としてサイコロではなくカードを使うゲームもあります。
設定された数値に対して、プレイヤーはキャラクターの能力値とサイコロの出た目を組み合わせて結果を求めます。GMはその結果で、キャラクターの行動が成功したか失敗したかを決定して結果を伝えます。
「13?……残念ながら、君の剣は怪物に当たらなかった」という具合です。
格好つけたセリフを言って剣を振っても、はずれどころか武器を落としてしまったなんてこともよくある話し。プレイヤーとGMの思惑をこえた展開を見せてくれるのもゲームならではでしょう。 そんな風にロールプレイとルールはTRPGの両輪として、この遊びの楽しさをつくっています。

それで、何がそんなに楽しいの?

 TRPGはけっこうな労力を使う遊びです。4人からの人間が半日かかって遊ぶし、色んなルールを覚えなくちゃならないし、GMになったら、シナリオをつくって進行役をしなくちゃなりません。
もっとお手軽に仮想体験をするならコンピューターのゲームはいっぱいあるし、ネットゲームもあるでしょう。近ごろはなりきりチャットというのも人気だとか。 TRPGはそれらと比べると、ずいぶん効率の悪い遊びに思えるかも知れません。
でも、この人と人が集まってわいわい言いながらゲームをして、その軌跡がひとつの物語になっていくさまは、ときに「やっぱり人っていいな」と思わせてくれるあたたかさがあります。
かっこいいキャラクターのセリフに舌を巻いたり、スリリングなGMの仕掛けに知恵をしぼって挑んだり、息のあうプレイヤーとかけあいを楽しんだり。
まるでジャズの即興セッションのように、自分のパートが他のパートとひびきあって豊かな時間をつくっていく。そんな瞬間があるから、TRPGには他のゲームにはない魅力があるのです。

つらつらとTRPGという遊びについて言葉を費やしてみましたが、さてイメージは伝わったでしょうか。わかりにくい言葉や文章などありましたら、ぜひご意見をお寄せ下さい。
いつか、これを読んでいるあなたとも卓を囲む機会が訪れますように。


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