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GM:君が森の奥に向かって歩いていくと、湖の方からクラリネットの音が流れてくる。
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PC:あの曲……。クァナが口ずさんでいた……。
実はこの場面、おもちゃのキーボードで演奏しているのだ。もちろん音色はクラリネット。安物だけど、メロディを記録することもできるので、後半は裏メロもつけて演奏したりした。
このセッションをしていたときの1993年当時、わたしはまだ劇団で仕事をするなんて夢にも思ってはいなかった。芝居は好きでよく観に行っていたけど、音響については何の経験もない素人だ。
ただ、なぜか昔からラジオドラマや効果音に興味があって、効果音集のCDなんぞを購入することもあった。別に芝居で使うあてはない。あえていったら、TRPGのために買っているようなものだった。
GMのときはBGMにファンタジックな音楽をかけ、GMじゃなくてもキャンペーンのPCたちのイメージソングを選んで、プレイヤーの誕生日に贈った。
そして、わたしは今、仕事として舞台の音響効果を担当している。まだまだ駆け出しで学ぶべきことはたくさんある。だけどTRPGの音響効果は別にプロである必要なんてない。わたしが実践してきた卓上でできる音響効果を紹介してみましょう。
GMは忙しい。ダイスの判定、NPCの管理、先の展開の準備などをしながら状況を語り、眠っているプレイヤーを起こさなくてはいけない(?)。音楽をかけて操作するなんてとてもできない……という音響初心者の頃にしていたのがこの方法。
あらかじめオープニング曲とエンディング曲を選ぶ。10分くらいのテープのA面の頭にオープニング、B面の頭にエンディングを録音しておくのだ。デッキのオートリバースはない方がいい。これなら、最初の状況説明のときに音楽でプレイヤーを世界に導いておいて、後はマスタリングに集中できる。テープは曲が終わっても回り続けるが、終わりまできたら自動的に止まる。
あとはエンディングにちょっと余韻を感じさせる音楽を流して、セッションを締める。こんなワンポイントの使い方だって大丈夫。さあこれから物語が始まるぞという雰囲気をつくるのだ。
映画やドラマのようにシーンごとにBGMをかけたいときはCD&MDがいい。最近の人ならMP3も使うかもしれない。プログラムして好きな曲順でかけたり、1曲だけを繰り返し続ける1リピートはデジタルならではの便利な機能。
これがあると、酒場や港、洞窟、戦闘といった場面ごとに選んだ曲を好きなだけ繰り返しかけられる。テープしかないときは、短めのテープにイメージにあった曲を繰り返し録音しておいて、オートリバースで流せばいい。場面ごとにテープを用意して差しかえてね。テープの頭出しはセッション中には難しいので、なるべくかけっぱなしにできる条件をつくるのがコツ。
BGMの場合、音量は人の声を邪魔しないように気をつける。場面の始めだけは大きめに聞かせて、話しが始まると音量を絞った。TRPGの主役は人の会話だからね。かといって鳴っているんだかいないんだかわからない音量だと、かえってうっとうしい。このバランスはドラマとかの音楽の使い方を参考にした。
洞窟のときは水滴の音、雨の場面では豪雨の音……といった効果音もこんな風に1リピートしてよく使った。「雨が降っている」と言葉で言うより、ずっと長い間イメージをもたせることができるのが良かったな。
吟遊詩人の竪琴、崖崩れ、進軍を告げる笛……そんな場の主役となる音。これが決まるとかっこいい。決めるためにはタイミング。デジタル機器なら一発で頭出しができるので、その場面の最初から準備しておく。出したい音の頭でポーズ(一時停止)して、タイミングを見てポーズ解除。ポーズしておくのはその方が時間差がなく音が出るから。
ウォークマンだとある一定の時間を超えて操作しないでいると電源が切れるものがある。いざかけようとすると電源が切れていて立ち上がりに数秒間かかってしまうのだ。あれはなんといっても間が悪い。
場を変える音なので音量は大きく。もし、同じ機器をBGM用に使っていたなら、セッション前に主役音の音量をチェックして決めておく。「落雷:6曲目;音量25」などとメモしておくと吉。
テープならしっかりジャストな頭出しが必要。カウンターなど使って、何度か試してね。指でテープを巻いたりもした。そして再生~ポーズで待機状態に。
ちょっと準備が大変だけど、雷の音なんかはプレイヤーを驚かすくらいのインパクトがある。うまくやればいっきにリアルな緊迫感を出すことができる。
いざというときに迷わないよう、再生やポーズのボタンに目印テープをつけるのも音響効果の常套手段だ。
ちなみに吟遊詩人の歌など曲をしっかり聞かせる場合は、うんと短い曲を選ぶか1コーラスでフェードアウトした。じっとして音を聞くだけというのはプレイヤーにとってもしんどいからね。
洞窟、酒場、戦闘など、よくセッションに登場するシーンは、もうその場面用にディスクやテープをつくってストックすると便利。次のセッションでも使えるし、それが次第にたまっていったら、ちょっとした音響ライブラリができる。そうすれば、いちいちセッション前に曲を探さなくても選曲するだけで使えるからね。
川のせせらぎや雪の音、チャンバラ、銃声などの効果音集は50種類以上も出ている。しかし、それをすべて買い集めるのはとてもできない。そんなときは、図書館を利用している。CDを置いている図書館はけっこう増えていて、その町の住民なら無料で借りることができる。しかもレンタル屋よりもよく効果音集を揃えてあるのだ。学校の演劇など教育的なことがらに使用されるからかもしれない。
レポート:2000/11/15